Makeとは、複数のアプリやAPIをノーコードで連結し処理を自動化するiPaaS(クラウド自動化基盤)です。 いっぽうGeminiは、Googleが開発するマルチモーダルAIモデル群を指す。役割の階層がそもそも違う。Makeが「いつ・何を・どこへ運ぶか」を決める配管なら、Geminiは運ばれてきた情報を「読む・書く・判断する」頭脳だ。
この前提を外したまま比較表だけ眺めると、ほぼ確実に選択を誤る。だからまず両者の正体を切り分け、そのうえで性能とコストを横並びにします。
MakeとGeminiを「比較」する前に役割が違う
MakeとGeminiは同じ土俵に立っていません。片方は自動化のワークフロー、もう片方はそのワークフロー内で動くAIエンジンです。
Zapierやn8nと並ぶ自動化ツールがMake。ChatGPTやClaudeと並ぶAIモデルがGemini。つまり本来の比較軸は「Make vs Zapier」「Gemini vs ChatGPT」であって、「Make vs Gemini」は層が交差していません。
それでもこの検索が成立するのは、実務で両者を同じ画面の中で扱うからです。Makeのシナリオに「Geminiモジュール」を置けば、メール受信→Geminiで要約→Slack通知、が一本でつながります。比較の本質は「Makeに任せる部分とGeminiに任せる部分の線引き」にあります。
Makeとは何か|ノーコード自動化の中核
Makeは、ドラッグ&ドロップでアプリ間の処理フロー(シナリオ)を組むビジュアル自動化ツールです。旧称はIntegromatで、2,000以上のアプリ連携を持ちます。
強みは分岐・ループ・エラーハンドリングを視覚的に組める柔軟性にあります。単純なトリガー&アクションしか書けないツールと違い、Makeは「条件によって処理を変える」「失敗したらリトライする」といった複雑な制御を、コードなしで実現します。
地味に効くのが料金体系です。Makeは実行回数ではなく「operations(処理ステップ数)」で課金します。1シナリオで何件処理しても、消費するのはステップ数ぶんだけ。大量データを一括で回すほど割安になりやすいです。具体的なプラン金額は改定が入るため、最新はMakeの公式料金ページで確認してほしいです(2026年4月時点で無料プランは存在)。
似た「既存の業務ツールにAIをつなぐ」発想の比較としては、Microsoft CopilotとGeminiの比較も参考になります。「AIを日常の作業フローに組み込む」思想は共通しています。

Geminiとは何か|Googleの最先端AIモデル群
Geminiは単一モデルではなく、用途別に分かれたファミリーです。重い推論用の上位モデル、デフォルトの高速モデル、端末内で動く軽量モデルまでが揃います。
2026年3月時点の整理では、最上位のGemini 3.1 ProがARC-AGI-2で77.1%を記録し前世代の2倍超に達しました。日常用途のデフォルトはGemini 3 Flash、オンデバイス処理はNanoが担います。
その後もFlash系は世代交代が続き、2026年8月にGemini 3.7 Flashが一般提供へ移りました。価格据え置きのまま中身が引き上げられた格好です。同じ流れでChatGPTはGPT-5.6へ、ClaudeはOpus 5へと動いています。
Geminiの真価はマルチモーダルとGoogleエコシステム統合にあります。リアルタイム検索・GmailやドキュメントとのネイティブなつながりはGoogleならでは。Meta系AIとの立ち位置の違いはMeta AIとGeminiの比較で俯瞰できます。
結局どっちを使う?併用が9割
単体で完結する例外はあるが、ビジネス自動化の現場では「MakeのなかでGeminiを動かす」構成が圧倒的に主流です。
理由はシンプルで、両者が補完関係にあるからです。Makeは賢くありません。受信や転送や分岐は得意でも、文章の意味を理解して要約する能力はありません。Geminiは配管を持ちません。優れた要約を出せても、それをSlackに流したりスプレッドシートへ書き戻したりは自分でできません。
下の表が、機能の重なりと欠落を端的に示します。
| 能力 | Make | Gemini | 併用時 |
|---|---|---|---|
| アプリ間のデータ受け渡し | ◎ | × | ◎ |
| 条件分岐・スケジュール実行 | ◎ | △(単発のみ) | ◎ |
| 文章理解・要約・生成 | ×(AI連携で代替) | ◎ | ◎ |
| 画像・音声などマルチモーダル処理 | △ | ◎ | ◎ |
| ノーコードでの構築 | ◎ | ◎(対話のみ) | ◎ |
表が示すとおり、両者の「×」と「◎」がきれいに噛み合います。だから対立軸で語るほど現実から離れます。
性能で比べると何が違う?
性能の評価軸が別物なので、同じ物差しは使えません。Makeの性能は処理の安定性とスループット、Geminiの性能は推論の賢さで測ります。
Makeで見るべきは、シナリオの実行速度・同時処理数・エラー耐性です。大量レコードを回したときに落ちないか、リトライが効くかが勝負になります。Geminiで見るべきは、ベンチマークスコアと応答品質。前述のARC-AGI-2 77.1%(Gemini 3.1 Pro、2026年3月時点)が代表値です。
下表に評価観点を整理しました。性能を語るとき、どちらの軸の話かを取り違えないことが大事です。
| 観点 | Make(自動化性能) | Gemini(AI性能) |
|---|---|---|
| 主要指標 | operations処理量・実行安定性 | ベンチマーク(ARC-AGI-2等)・応答品質 |
| ボトルネック | 連携先APIのレート制限 | コンテキスト長・モデルの推論限界 |
| スケール方法 | 上位プランでoperations増 | 上位モデル(Pro/3.1 Pro)へ切替 |
| 体感差が出る場面 | 大量データの夜間バッチ | 長文要約・複雑な指示の解釈 |
要約すると、処理の量で困るならMakeのプラン、判断の質で困るならGeminiのモデル選びが効きます。性能改善のレバーがそもそも別の場所にあります。
コストはいくら?両者の料金を並べる
課金の単位が違うため、単純な月額比較は成立しません。Makeは処理ステップ課金、GeminiはモデルアクセスかAPI従量です。
Gemini側は把握しやすいです。無料版はFlash中心で上位モデルに回数制限があり、Google AI Proは月額2,900円でGemini 3 Proが使えます。比較対象として、ChatGPT Plusは月額20ドルでGPT-5.2 Thinkingが使える水準にあります。2026年5月の世代交代では価格据え置きが基本だったが、Geminiはヘビーユーザー向けに料金面の変化が出ている点に注意するとよいでしょう。
Makeは金額の改定が入りやすいため、本記事では具体額を断定しません。無料プランがあり、有料はoperations量に応じて段階的に上がる、という構造だけ押さえておけば十分だ(2026年4月時点、公式で要確認)。
| 項目 | Make | Gemini |
|---|---|---|
| 課金単位 | operations(処理ステップ数) | モデルアクセス(月額)/API(従量) |
| 無料枠 | あり(月次operations上限) | あり(Flash中心・上位は制限) |
| 代表的な有料 | 段階制(公式参照、2026年4月時点) | Google AI Pro月額2,900円(2026年4月時点) |
| コストが膨らむ要因 | 高頻度・多ステップのシナリオ | 上位モデル多用・長文API呼び出し |
併用する場合、コストは「Makeのoperations」と「GeminiのAPI従量」が別々に積み上がります。Makeのシナリオ内でGemini APIを叩く回数が増えるほど後者が効いてくるので、要約はまとめて一括処理する設計が財布に優しいです。
MakeからGeminiを呼ぶ構成が最強な理由
実務でいちばん投資対効果が高いのは、Makeをハブにしてその中でGeminiを部品として使う形です。
たとえば「問い合わせメール受信→Geminiで要点抽出と緊急度判定→緊急ならSlackへ即通知、通常はスプレッドシートへ記録」。この一連を人手ゼロで回せます。Makeが配送と分岐を担い、Geminiが判断を担います。役割分担が明確だから、壊れにくく改修もしやすいです。
この構成の強みは、AIモデルを差し替えられる点にもあります。今日はGemini、明日は別モデル、という乗り換えがMake側の設定変更だけで済みます。乗り換え候補のモデル比較はGrokとGeminiの比較が参考になり、「モデルを差し替えながら使い比べる」流れは加速しています。
Gemini単体で十分なケース
自動化が要らないなら、Makeを噛ませる必要はありません。対話で完結する作業はGemini単体が一択です。
ブレインストーミング、文章のたたき台作成、画像生成、コードの相談。いずれも「人間が都度プロンプトを打つ」性質の作業はGeminiのアプリやWebで足ります。ここにMakeを挟むのはむしろ遠回りになります。
動画生成のように特定モデルに依存する用途も同様で、たとえばSoraの解説が扱う領域は、まず単体ツールで触ってから自動化を考えるのが順序として正しいです。
Make単体(他AI)で十分なケース
逆に、AIの賢さが要らない自動化はMake単体で完結します。判断を伴わない右から左の転送なら、Geminiは過剰です。
「フォーム送信→CRMへ登録→確認メール送信」のような定型処理に、文章理解は要りません。ここでGeminiを呼ぶのはコストの無駄。Makeのモジュールだけで組んだほうが速く、安く、壊れにくいです。
ポイントは「そのステップに判断が必要か」です。判断が要るならGemini、要らないならMake標準モジュール。この線引きが設計の肝になります。
日本語対応とローカライズの実力
日本語の扱いは両者で性質が異なります。Geminiは日本語ネイティブ、MakeはUI英語・データは言語非依存です。
Geminiは日本語の生成・要約・翻訳を高水準でこなします。Makeの管理画面は英語中心だが、扱うデータが日本語でも処理に支障はありません。つまり「Makeの英語UIに慣れれば、日本語業務はGeminiが受け持つ」形で実害は出にくいです。
業種特化の現場でも同じ構図です。たとえば歯科クリニックのAI活用事例のような領域では、日本語の問診要約はGemini、予約システムへの連携はMake、と役割が自然に分かれます。
セキュリティとデータ保護で見るべき点
機微データを通すなら、両者の認証と規約は必ず確認するとよいでしょう。Makeは第三者認証を公表、GeminiはGoogle Cloudの基盤に乗ります。
Makeはエンタープライズ向けにSOC2やISO27001、GDPR対応を掲げています(2026年4月時点、公式参照)。GeminiはGoogleのインフラとデータポリシーに準拠します。問題になりやすいのは「Makeのシナリオを通じて、社内データが外部AIへ渡る」経路です。
だから設計時は、Geminiへ送る前にMake側で個人情報をマスキングする、機密フィールドは渡さない、といったガードを一段挟むのが安全です。便利さと引き換えに情報を素通しにしないこと。
導入の手順|MakeにGeminiをつなぐ
つなぎ込み自体は難しくありません。アカウントとAPIキーがあれば、最短で動き出します。
大筋の流れはこうです。Makeアカウントを用意し、新規シナリオを作成します。トリガー(メール受信やフォーム送信)を置き、続けてGeminiモジュール(またはHTTPでGemini API)を追加します。GeminiのAPIキーを発行して接続し、出力先(Slackやスプレッドシート)を最後につなぎます。
最初の一本はあえて小さく作るのが鉄則です。いきなり全業務を自動化しようとすると、どこで詰まったか分からなくなります。1トリガー・1判断・1出力の最小構成でテストし、安定を確認してから広げます。
よくある失敗と回避策
つまずきの大半は、設計の粗さに起因します。事前に潰せる落とし穴を挙げておきます。
- Gemini呼び出しを多用してコスト爆発 → 要約は1件ずつでなくバッチでまとめて処理する
- エラー時にシナリオが止まる → Makeのエラーハンドラとリトライを必ず設定する
- 機密データを無防備にAIへ送信 → Make側でマスキング/フィルタを一段挟む
- 出力フォーマットが安定しない → Geminiへの指示で出力形式(JSON等)を明示固定する
これらは運用開始後に痛い目を見る典型です。最初に作法として組み込んでおけば、後追いの修正コストを大きく減らせます。
関連する比較・代替を見る
- Make vs Zapierの比較
- Make vs n8nの比較
- Gemini vs ChatGPTの比較
- Gemini vs Claudeの比較
- Makeの代替ツールを見る
- AI自動化カテゴリの一覧
AI PICKS編集部の判定
「Make Gemini比較」という問い自体が、半分は誤った前提に立っている、というのが編集部の率直な見立てです。両者は競合ではなく、配管と頭脳という別レイヤーにあります。だから「どちらが優れているか」を決めようとするほど、答えから遠ざかります。
正しい問いは「どこまでをMakeに任せ、どこからGeminiに考えさせるか」です。判断が不要な定型処理はMake標準モジュールで十分。文章理解や要約が絡む瞬間だけGeminiを呼びます。この線引きを最初に決めておくと、コストも保守性も一気に安定します。
性能で迷うなら、それが「処理量の壁」なのか「賢さの壁」なのかを切り分けてほしいです。前者はMakeのプラン、後者はGeminiのモデル選択が効きます。レバーの場所を間違えると、いくら課金しても改善しません。ビジネス自動化なら併用が一択、対話で済む作業ならGemini単体が破格に手軽。この二択で9割は片づきます。
編集部の評価
正直に言えば、Make単体・Gemini単体それぞれの完成度は高く、弱点はお互いがきれいに埋めます。Makeの「operations課金」は大量処理ほど割安に振れる設計で重宝するし、Geminiは価格据え置きで世代交代を続けており、コスパは圧倒的です(2026年5月時点)。
微妙なのは学習コストの非対称さです。Geminiは触ればすぐ使えるが、Makeはシナリオ設計の発想に慣れるまで少し時間がかかります。ここを越えれば一気に世界が広がります。逆に越えられないと「結局手作業に戻る」になりがちなので、最初の一本を小さく完走させる体験が決定的に効きます。
よくある質問(FAQ)
Q. MakeとGeminiはどちらが優れていますか?
比較対象が違うため優劣は付けられません。Makeは自動化基盤、GeminiはAIモデルで、役割が別レイヤーにあります。実務ではMakeの中でGeminiを呼ぶ併用が主流です。
Q. Make単体でAI処理はできますか?
Make自体に高度な文章理解能力はありません。ただしGeminiやその他AIのモジュール/APIを連携すれば、Makeのシナリオ内でAI処理を実行できます。
Q. 料金はどちらが高いですか?
課金単位が異なるため一概に言えません。Makeはoperations(処理ステップ)課金、GeminiはモデルアクセスかAPI従量。併用時は両方が別々に積み上がります(2026年4月時点)。
Q. Geminiの最新モデルは何ですか?
2026年9月時点でProクラスの現行はGemini 3.1 Pro(ARC-AGI-2で77.1%)、Flash系の最新はGemini 3.7 Flash。オンデバイス向けにはNanoが用意されています。
Q. 日本語業務でも問題なく使えますか?
Geminiは日本語ネイティブ対応で支障ません。Makeは管理画面が英語中心だが、扱うデータが日本語でも処理上の問題は出にくいです。
Q. 機密データをGeminiに送っても安全ですか?
送信前にMake側でマスキングやフィルタを一段挟むのが安全です。MakeはSOC2/ISO27001等を公表、GeminiはGoogle基盤に準拠するが、経路設計の責任は利用側にあります。
Q. 初心者はどちらから始めるべきですか?
まずGemini単体で対話に慣れ、定型作業が見えてきたらMakeで自動化する順序が無理がありません。最初の自動化は最小構成で完走させること。


