原稿を貼れば数十秒でナレーションが返ってきます。数年前ならナレーターの手配と録音場所が要った工程です。そこは本当に楽になりました。
代わりに面倒になったのが条件の読み解き。無料表記の裏にある文字数・書き出し可否・商用の線引きを、つまずく順に並べます。
無料のAI音声読み上げ、選択肢はどう分かれる?
無料枠の広さと商用条件で並べると、国産のローカル型と海外のクラウド型できれいに割れます。主要8本の全体像から。
| ツール | 無料枠 | 商用利用 | 登録 | 日本語 | 形態 |
|---|---|---|---|---|---|
| VOICEVOX | 文字数の上限なし・費用ゼロ | 可(キャラ規約に従う) | 不要 | ◎ | ローカル |
| 音読さん | 登録後月5,000文字 | プランにより可 | 必要 | ◎ | クラウド |
| SpeechGen | 1,000文字ほどの試用 | 従量課金が前提 | 一部必要 | ○ | クラウド |
| ElevenLabs | 月10,000クレジット | Starter(月6ドル)以上 | 必要 | ○ | クラウド |
| Fliki | 月5分 | 有料プラン(月21ドル〜) | 必要 | ○ | クラウド |
| Narakeet | お試し枠のみ | 有料プラン推奨 | 必要 | ○ | クラウド |
| Murf AI | あり(商用権なし) | Creator(月29ドル)以上 | 必要 | △ | クラウド |
| Speechify | 声の種類が絞られる | 有料プラン推奨 | 必要 | ○ | クラウド |
つまり、費用をゼロのまま商用まで通すならVOICEVOX、声の表現力に投資するなら海外勢の有料プラン。判断はほぼこの二択に落ちます。
この8本に加えて、後半で自分のPCに入れて動かすオープンソース勢を4本まとめました。合わせて12本。表の外まで見ると、月額を払わずに済む場面が増えます。
「無料枠が広いほど得」で読むと、ここで足をすくわれます。無料の中身が一様ではないからです。

「無料」は4種類ある。動画が消えるのはどの読み違い?

無料表記は「完全無料」「上限つき」「試聴だけ」「条件つき」の4つに割れます。動画の削除やアカウント停止につながるのは、後ろの2つを見落としたときです。
完全無料は文字数も用途も縛られないタイプ。VOICEVOXがここです。キャラクターごとの規約さえ守れば、運用費はゼロのまま動きます。
上限つきは月あたりの文字数や分数が決まっているタイプ。音読さんの5,000文字、Flikiの5分がこれ。10分のナレーション原稿はおよそ3,000〜4,000文字なので、月に2本で枯れます。
試聴だけが、いちばん時間を溶かすタイプです。画面上では再生できるのに、音声ファイルの書き出しは有料プラン限定という設計。原稿を全部流し込んだあとで気づくので、損失が痛い。
条件つきはクレジット表記や用途の限定と引き換えに使えるタイプ。表記の負担は概要欄の1行ぶんです。ただし、その1行を消した瞬間に規約違反になります。
原稿の分量と無料枠の相性は、先に当てておくと迷いません。目安はこの4行。
| 作りたいもの | おおよその文字数 | 音声の長さ | 月5,000文字で足りるか |
|---|---|---|---|
| SNSの短尺動画 | 300字 | 約1分 | 十分に足ります |
| ブログ記事の音声版 | 3,000字 | 約10分 | 月1本が限界 |
| 週1本のYouTube解説 | 月12,000字 | 約40分 | 足りません |
| オーディオブック1章 | 8,000字 | 約25分 | 足りません |
つまり、月5,000文字で回るのは短尺SNSだけ。音質の比較は、この突き合わせを越えてからで間に合います。
無料で商用まで通したいなら、なぜVOICEVOXが一択なのか?

VOICEVOXは、自分のPCに入れて動かす日本語のAI音声読み上げソフトです。文字数の制限がなく、費用は完全にゼロ。書き出したWAVファイルはそのまま動画編集ソフトへ持っていけます。
無料の3条件(上限なし・費用ゼロ・商用可)を同時に満たすのは、この記事で並べた12本のなかでVOICEVOXだけ。ここは他と比べる段階になっていません。
導入は5ステップです。
- 公式サイトから自分のOS(Windows / macOS / Linux)向けのインストーラーを落とす
- インストーラーを実行し、使いたいキャラクターの音声ライブラリを入れる
- テキスト欄に原稿を貼り、話者を選んで再生する
- アクセントと間(ま)を調整して、WAVで書き出す
- 公開前に、そのキャラクターの規約でクレジット表記の要否を確認する
5番目が本番です。VOICEVOX全体としては商用利用が認められていますが、条件はキャラクターごとに違います。クレジット表記の書式を指定しているキャラ、特定の用途を断っているキャラがいます。
ここまでの整理: 「VOICEVOXは商用OK」で止めると危ない。正しくは「ソフトは商用OK、条件はキャラ単位」です。使う声を決めたら、その声の規約ページを1回だけ読んでおく。この5分が、公開後の取り下げを防ぎます。
弱点も正直に書きます。合成音声とすぐ分かる声質なので、企業のブランド動画やナレーションの主役には向きません。解説動画・ゆっくり系・社内マニュアルなど、キャラクター音声が違和感にならない場面が主戦場です。
ElevenLabsとの棲み分けをもっと細かく知りたいなら、ElevenLabsとVOICEVOXの比較に音質と料金の判断軸をまとめてあります。無料の限界がどこで来るかが早く掴めます。
インストールを避けたい人には、別の答えがあります。
インストールしたくない人の答えは? 音読さん

音読さんは、ブラウザだけで完結する国産のクラウド型です。ソフトを入れる権限がない会社のPCでも動くのが強み。
無料枠は登録後に月5,000文字。未登録でも試せますが、枠はさらに狭くなります。5,000文字は10分の動画1本ぶんと考えると分かりやすいです。
生成した音声はダウンロードでき、無料プランでも書き出しは可能です。「試聴だけ無料」で止まる海外勢と違うのはここ。ただし商用の条件はプランで変わるので、業務で使うなら料金ページの現行表記を確認してから走らせます。
日本語の読み上げ精度は素直で、固有名詞の読み間違いも辞書機能で潰せます。月に数本のペースなら、無料枠のまま回せる設計。
Canvaのように、動画編集の中に読み上げが組み込まれているタイプもあります。Canvaは音声生成から動画の書き出しまで1画面で済むので、素材とナレーションを別々に管理したくない人には楽な選択です。
海外勢の無料枠は、日本のツールとは考え方がまるで違います。
海外勢の無料枠はなぜ「買う前の試着室」なのか?
ElevenLabs、Murf AI、Speechify、Fliki。海外の主要TTSの無料枠は、共通して「品質を確かめてもらうための枠」として設計されています。運用のための枠ではありません。
| ツール | 無料枠の実態 | 商用が付く最低ライン |
|---|---|---|
| ElevenLabs | 月10,000クレジット(約10分ぶん) | Starter月6ドル |
| Murf AI | 生成は可・商用権なし | Creator月29ドル |
| Fliki | 月5分 | 月21ドル〜 |
| Speechify | 声の種類が制限される | 有料プラン |
| Narakeet | お試し枠のみ | 有料プラン |
つまり、海外勢を無料のまま業務に組み込む前提は成り立ちません。品質を確かめて、続けるかを決める場所です。
ElevenLabsの音質は破格で、日本語も含めて「合成だと言われなければ気づかない」水準に来ています。月6ドルで商用まで通るなら、外注のナレーション1本ぶんで1年払える計算。ここを渋る理由はほとんどありません。
逆に、無料のまま粘りたい人がElevenLabsの10分枠に原稿を流し込むのは時間の無駄です。10分は、SNSの1分動画なら10本ぶん。解説動画を1本作れば、それだけで使い切ります。
Murf AIは注意が要ります。無料プランでも音声は作れますが、商用の権利が付いていません。「作れた=使っていい」ではない典型です。
日本語ナレーションを外注したときの相場と比べたいなら、AIナレーションと声優の料金比較に単価の実勢を置いてあります。月6ドルが高いのか安いのかが、数字で判断できます。
無料枠そのものが消えるケースもあります。
提供終了で消えた無料枠がある。古い比較表がいちばん危ない

無料の定番として挙げられてきたボイスゲート(VOICE GATE)は、2026年7月31日をもって法人向けサービスへ完全に移行しました。個人向けの新規受付は同年7月10日で止まっています。
「月1,000文字まで無料・クレジット表記で商用OK」という条件で紹介している比較記事は、もう存在しない選択肢を載せている状態です。無料ツールの記事は更新が止まりやすく、これがその典型。
見分け方は3つあります。
- 記事の更新日が半年以上前で止まっている
- 料金の記述に「◯◯円(税込)」の年月表記がない
- 終了したはずのサービスが表に残っている
無料ツールの情報は、公式サイトの料金ページを最終確認先にするのが確実です。比較記事は当たりをつけるための地図で、契約の根拠にはなりません。
規約変更で条件が変わる例も同じ扱いです。去年まで商用可だった無料プランが、いまも商用可とは限りません。使い始める日と、公開する日の両方で見るのが安全側の運用です。
費用ゼロのまま、もっと自由に使いたい人向けの道が残っています。
オープンソース勢なら、費用ゼロのまま商用まで届く
自分のPCで動かすオープンソースのTTSは、ライセンスが緩いものを選べば商用利用まで通ります。クラウドの文字数制限とも無縁。
実用性の高い順に4本並べます。
| ツール | ライセンス | 日本語 | 向いている用途 | ハードル |
|---|---|---|---|---|
| Style-Bert-VITS2 | コードはAGPL-3.0(モデルは別規約) | ◎ 国産・日本語特化 | 解説動画・ナレーション | 規約の読み込み |
| GPT-SoVITS | MIT | ○ 公式サポート言語 | 自分の声を素材化する | 学習にGPUが要る |
| Kokoro | Apache-2.0(重みも) | △ 日本語音声は5種 | ライセンスを気にせず回したい | 日本語の品質 |
| Chatterbox | MIT | △ 多言語版のみ対応 | 英語ナレーション中心 | 日本語は後発 |
つまり、費用をゼロに保ったまま自由度を上げるなら、手間をどこまで引き受けるかの交換になります。
日本語の実用品質で頭ひとつ抜けているのはStyle-Bert-VITS2です。 国産で日本語に特化していて、合成するだけならGPUなしのCPUでも動きます。Windowsならバッチファイルをダブルクリックで入ります。代わりに規約が一番ややこしく、コードはAGPL、付属の音声モデルはモデルごとに別の条件です。JVNVコーパス系はCC BY-SA 4.0で継承義務があり、あみたろ系はクレジット表記が要ります。商用で使うなら、使う声の規約を1つずつ読んでください。
ライセンスで悩みたくないならKokoroです。重みまでApache-2.0で、クレジット表記も要りません。ただし公式が公開している日本語音声の評価はC帯で、英語のA帯とは差があります。ナレーションの主役に据えるより、下読みや検証用と考えるほうが合っています。
ここでの最大の落とし穴は「オープンソース=商用も自由」という思い込みです。 有名なところではMeta の MusicGen 系や Coqui の XTTS-v2 が、コードは自由でも重みが非商用ライセンスという作りになっています。無料で落とせることと、仕事で使ってよいことは別。公開前に必ずライセンス表記を読んでください。
OSSを避けたい人向けに、OS標準の読み上げも書いておきます。Windowsのナレーターは追加インストール不要で、日本語の自然な声(慶太・七海)を設定から足せます。macOSはシステム設定のアクセシビリティにある「リーダーと読み上げ」(以前の「読み上げコンテンツ」)で、Option+Escを押せば選択したテキストを読み上げます。書き出し用ではありませんが、原稿の不自然な部分を耳で見つける用途には十分です。
声そのものを加工したいなら、無料の音声変換ツールのほうが目的に近い場合があります。読み上げと変換は用途が違うので、混ざると遠回りになります。
用途から一発で決めたい人向けに、選択の道筋を1枚にまとめます。
用途から3分で決めるなら、どれを選べばいい?
3つの質問に答えるだけで、候補は1つに絞れます。
質問1: 作る音声は月に何分ですか。 10分以内なら音読さんやElevenLabsの無料枠で足ります。それを超えるならVOICEVOXかオープンソースへ。文字数の上限がないことが、そのまま効いてきます。
質問2: 公開する場所は収益化されていますか。 YouTubeの広告収入、業務での納品、有料商品。どれかに当たるなら「商用可」の明記が必須です。Murf AIの無料プランのように、生成はできても権利が付かないものを除外します。
質問3: 合成音声とバレて困りますか。 困らないならVOICEVOXで完結。困るならElevenLabsのStarter以上へ。月6ドルの支出で解決する問題に、無料枠で何時間も粘るのは割に合いません。
| あなたの状況 | 選ぶもの | 月あたりの費用 |
|---|---|---|
| 解説動画を毎週作る個人 | VOICEVOX | 0円 |
| 会社PCでたまに使う | 音読さん | 0円 |
| ブランド動画のナレーション | ElevenLabs Starter | 約6ドル |
| 多言語で展開したい | ElevenLabs / OSS | 6ドル〜 |
| 記事の下読みだけ | OS標準の読み上げ | 0円 |
つまり、迷いの正体はたいてい「合成音声でいいかどうか」です。ここを先に決めると、残りは自動的に決まります。
編集部の評価
公開情報とツールの料金ページを突き合わせた率直な評価を置きます。
VOICEVOX: 無料の枠組みとして圧倒的です。文字数の上限がなく、費用ゼロで、商用も通る。この3つが揃う選択肢が他にない以上、比較の対象になっていません。キャラクター単位の規約という一手間だけが対価です。
音読さん: 会社PCでソフトを入れられない環境では重宝します。月5,000文字は少なく見えますが、無料で書き出しまでできる点は地味に効きます。
ElevenLabs: 音質は現時点で頭ひとつ抜けています。ただし無料枠は完全に試着室で、運用には使えません。月6ドルを払う前提のツールと割り切るのが正解です。
Murf AI: 無料プランに商用権が付かない設計は、正直イマイチです。作れてしまう分だけ事故が起きやすい。試すなら公開しない素材で。
Speechify・Narakeet・Fliki: 無料枠での日本語運用は微妙です。それぞれ強みはありますが、「無料で日本語ナレーション」という目的に対しては候補から外れます。
ボイスゲート: 個人向けは終了済み。いまも無料枠として紹介している情報は信じないでください。
よくある質問(FAQ)
Q. 完全無料で商用利用できるAI音声読み上げはありますか
VOICEVOXが該当します。文字数の制限がなく、費用もかかりません。ただし商用の条件はキャラクターごとに決まっているため、使う声の規約ページで確認が必要です。クレジット表記を求めるキャラクターもいます。
Q. 無料枠の「月5,000文字」はどのくらい使えますか
音声にしておよそ15〜17分ぶんです。10分の解説動画なら1本、SNSの1分動画なら10本以上作れます。週1本のペースで動画を出すなら、月の後半で枯れる計算になります。
Q. 無料プランで作った音声をYouTubeの収益化動画に使えますか
ツールによります。VOICEVOXは規約の範囲で可、音読さんはプラン次第、Murf AIの無料プランは商用権が付かないため不可です。収益化されたチャンネルは商用扱いになるので、「個人利用だから大丈夫」という判断は通りません。
Q. 日本語の読み間違いはどう直しますか
多くのツールに読み方の辞書機能があります。VOICEVOXならアクセント欄で1文字ずつ調整でき、音読さんは辞書登録で固有名詞を固定できます。人名・社名・専門用語は、最初に登録しておくと以降が楽になります。
Q. ボイスゲートはもう使えないのですか
個人向けサービスは2026年7月31日で終了しました。新規の個人登録は同年7月10日で停止しています。法人向けサービスへ移行したため、個人が無料枠として使う道は残っていません。
無料のAI音声読み上げで迷ったら、VOICEVOXを入れて1本作ってみるのが最短です。合わなければ、そこで初めて有料の音質に投資するかを考えます。順番を逆にすると、試着室で時間だけが減ります。
次に読むならこれ: ElevenLabsとVOICEVOXの比較。無料で粘るか月6ドルを払うかの分かれ目を、音質と用途の両面から詰めてあります。この記事で候補を2つに絞れた人が、最後の1つを決めるための材料です。
各ツールの公式サイト(一次情報)
料金・機能・対応範囲は各社公式が一次情報です。本記事は公開時点の検証に基づきますが、最新かつ正確な条件は必ず各公式ページで確認してください。
- VOICEVOX:公式サイト(AI PICKSの詳細)
- ElevenLabs:公式サイト(AI PICKSの詳細)
- Speechgen:公式サイト(AI PICKSの詳細)
- Narakeet:公式サイト(AI PICKSの詳細)
- Murf AI:公式サイト(AI PICKSの詳細)
- Speechify:公式サイト(AI PICKSの詳細)



