Label Studioの使い方|インストールからアノテーション・エクスポートまで
Label Studioとは、画像・テキスト・音声・動画・時系列まで1つの画面で扱える、オープンソースのデータラベリング(アノテーション)ツールです。アノテーションとは、AIに学習させるためのデータに「これは犬」「ここが固有名詞」といった正解ラベルを付ける作業のこと。Label Studioはその作業環境を無料で立ち上げられます。
使い方の全体像はシンプルだ。pip install label-studio か Docker で起動し、ブラウザでプロジェクトを作り、データを取り込み、ラベルを付けて、機械学習で使える形式に書き出す。慣れれば最初のプロジェクトは30分で動く。
この記事のポイント Label Studioの使い方を、インストール(pip/brew/Docker)→プロジェクト作成→画像・テキスト・音声のアノテーション→エクスポート→MLバックエンド連携の順に手順で解説。無料のCommunity版とStarter Cloud($99/月〜)/Enterpriseの料金差、CVAT・Labelboxとの使い分けまで網羅する(最終確認: 2026-06-28)。
Label Studio は、HumanSignal社(旧Heartex)が開発するデータラベリングプラットフォームです。研究機関から国内外のAIスタートアップまで採用が広く、Slackコミュニティも大きい。最大の強みは「マルチモーダル対応 × 無料で使える × カスタマイズ性」の三拍子で、テキスト・画像・音声・動画・時系列を同じUIで処理できる点にある。
「AIモデルを作りたいけど、学習データのラベリングをどのツールでやればいい?」——機械学習やLLMファインチューニング(自社データでAIを賢く調整すること)に取り組む人が最初にぶつかる壁が、まさにここだ。本記事はその答えとして、Label Studioを実際に動かす手順を頭から最後まで追う。
まず結論:あなたはどのエディションを使うべき?
迷ったら、この5択で決めていい。
- 無料でセルフホストしたい → Community Edition(完全無料、pip/Dockerで動く)
- チームで使いたい・クラウド管理したい → Starter Cloud($99/月〜、最新料金は公式)
- セキュリティ・SSO・大規模運用 → Enterprise(要見積もり)
- 動画のトラッキングが主用途 → CVATのほうが向く場合が多い
- エンジニアチームでUIを作り込みたい → Label Studioが一択
個人や研究、小さなチームの検証なら、ほぼ全員がCommunity Editionで足りる。まずは無料で立ち上げて、運用が重くなってきたら有料版を検討する——これが現実的な順番だ。
Label Studioとは?特徴と活用シーン
Label Studioは、AIモデルの学習に必要なアノテーション作業を効率化するオープンソースのプラットフォームだ。2019年の公開から普及し、オープンソースのデータラベリングツールとしては世界最大級のコミュニティを抱える。
何が嬉しいのか。普通、画像用・テキスト用・音声用とツールが分かれがちなところを、Label Studioは1つにまとめてくれる。プロジェクトごとに「今回は画像のバウンディングボックス」「次はテキストのNER」と切り替えるだけでいい。
Label Studioで対応できるデータ種別
扱えるデータの幅広さが、選ばれる一番の理由だ。代表的なタスクと併せて並べる。
| データ種別 | 代表的なタスク |
|---|---|
| 画像 | バウンディングボックス、セグメンテーション、キーポイント |
| テキスト | 固有表現認識(NER)、感情分析、テキスト分類 |
| 音声 | 文字起こし、感情ラベリング、話者分離 |
| 動画 | オブジェクト追跡、行動認識、シーン分類 |
| 時系列 | 異常検知、信号分類 |
| PDF・文書 | OCR、レイアウト解析、文書AI |
| LLM評価 | 回答品質評価、応答比較、RLHF用データ作成 |
つまり「画像だけ」「テキストだけ」で完結しないプロジェクトほど、Label Studioの一元管理が効いてくる。
特に強みを発揮するユースケース
① LLMファインチューニング用データ作成 ChatGPTやClaudeのような生成AIを自社データで特化させるには、高品質な教師データが要る。Label StudioはLLM応答の評価・比較・ランキング用テンプレートを備え、RLHF(人間のフィードバックでAIを訓練する仕組み)向けデータセットの構築に向く。
② 医療・金融・法務など機密データのアノテーション ローカルやオンプレミスで動かせるため、外部クラウドにデータを出したくない用途に使える。ただし安全性はインフラ構成・アクセス権限・暗号化・監査ログ・法令対応(個人情報保護法、HIPAA等)に依存する。HIPAA対応や監査ログといったコンプライアンス機能はEnterpriseの対象で、Community Editionのローカル運用だけで医療情報の安全が保証されるわけではない。要件に応じてプラン選定と運用設計を行うこと。
③ 複数データタイプを横断するMLプロジェクト 自動運転・監視カメラ・マルチモーダルAIなど、画像+音声+テキストを同時に扱う案件を1つのプラットフォームに統合できる。
Label Studioの料金は?無料版と有料版の違い
Label Studioは3つのエディションを提供している。価格そのものより「どこから課金が始まるか」を押さえると判断が早い。
| プラン | 月額費用 | ホスティング | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Community Edition | 無料 | セルフホスト | 全コア機能、ユーザー数無制限(全員管理者権限) |
| Starter Cloud | $99/月〜 | クラウド管理 | RBAC、品質レビュー、追加ユーザーは1名$49/月(最大12名)※ |
| Enterprise | 要見積もり | クラウド/オンプレ | SSO、SAML/LDAP、監査ログ、HIPAA・SOC2対応、QA分析 |
※Starter Cloudは基本$99/月に加え、ユーザーを1名増やすごとに$49/月が乗る(最大12名、2026-06-28時点 公式料金ページ)。最新の価格は必ず公式で確認すること。
無料版と有料版の本質的な差は、機能の多寡というより「チーム運用の作法」にある。Community Editionは全員が管理者になるため、誰がレビューし誰が承認するかの線引きができない。ここが必要になった瞬間が、Starter Cloud以上を検討するタイミングだ。
各プランの選び方
Community Editionが向いている人:
- 個人・研究者・スモールチームで試したい
- Dockerやpipで自前運用できるエンジニア
- 機密データをローカルで扱いたい
Starter Cloudが向いている人:
- インフラ管理をしたくない3〜12名のチーム
- レビュアーとアノテーターのロール分離が要る
- クラウドストレージ(S3・GCS・Azure)と連携したい
Enterpriseが向いている人:
- 100名以上の大規模チームや企業
- SSOやSCIMでユーザー管理を一元化したい
- SOC2・HIPAA・エアギャップ環境が必須要件
料金は改定される。最新の価格・追加ユーザー料金はHumanSignal公式料金ページで確認するのが鉄則だ。価格を把握したら、実際に手元で動かしてみよう。
ステップ1:Label Studioをインストールする(pip / brew / Docker)
Community Editionは、pip・brew・Dockerの3通りで入る。Python環境があるならpipが最短、本番やチーム運用ならDockerが堅い。初めてなら、まずpipで触ってみるのをすすめる。
方法1:pip(Python環境がある方・最もシンプル)
Pythonが入っていれば、実質2コマンドで起動できる。
# 仮想環境を作成して有効化(推奨)
python -m venv ls-env
source ls-env/bin/activate # Windowsは: ls-env\Scripts\activate
# Label Studioをインストール
pip install label-studio
# 起動(デフォルトはhttp://localhost:8080)
label-studio
初回起動でブラウザが自動的に開く。サインアップ画面でメールアドレスとパスワードを設定すれば、その場で使い始められる。
方法2:brew(Macユーザー向け)
# tapリポジトリを追加
brew tap humansignal/tap
# インストール
brew install humansignal/tap/label-studio
# 起動
label-studio
方法3:Docker(本番運用・チーム利用に推奨)
# 基本的なDockerコンテナ起動
docker run -it \
-p 8080:8080 \
-v $(pwd)/mydata:/label-studio/data \
heartexlabs/label-studio:latest
ローカルのファイルをLabel Studioから直接読みたい場合は、環境変数で許可する。
# ローカルファイルアクセスを許可する場合
docker run -it \
-p 8080:8080 \
-v $(pwd)/mydata:/label-studio/data \
--env LABEL_STUDIO_LOCAL_FILES_SERVING_ENABLED=true \
--env LABEL_STUDIO_LOCAL_FILES_DOCUMENT_ROOT=/label-studio/files \
-v $(pwd)/myfiles:/label-studio/files \
heartexlabs/label-studio:latest
チーム利用ならDocker Compose版も公式GitHubで公開されており、PostgreSQLとnginxをまとめて構成できる。
注意: MacでSafariを使うと一部の操作が引っかかることがある。Google Chromeを推奨する。
インストールが終われば、あとはブラウザ上の作業だ。最初のプロジェクトを作っていく。
ステップ2:プロジェクトを作成する
Label Studioの操作は「プロジェクト作成 → データインポート → ラベリング設定 → アノテーション → エクスポート」の5段階で進む。まずは器となるプロジェクトを作る。
- ブラウザで
http://localhost:8080にアクセス - サインアップまたはログイン
- 「Create Project」をクリック
- プロジェクト名を入力して「Save」
ここまでは1分で終わる。プロジェクトは「1つのラベリング作業の単位」と考えればいい。画像検出用とテキスト分類用は、別プロジェクトに分けるのが基本だ。
ステップ3:データをインポートする
プロジェクト設定の「Data Import」タブから、3通りでデータを取り込める。
- ローカルファイルのアップロード: 「Upload Files」にドラッグ&ドロップ
- クラウドストレージ連携: S3・GCS・Azure Blob Storageをソースに設定
- URLによるインポート: 画像URLのリストをCSVやJSONで読み込み
小規模ならドラッグ&ドロップで十分。データが数千件を超えたり、定期的に増えるなら、最初からクラウドストレージ連携にしておくと後がラクだ。
ステップ4:ラベリング設定(テンプレートを選ぶ)
「Labeling Setup」タブで、何をラベリングするかを決める。Label Studioは100種類以上のテンプレートを用意しており、ゼロから画面を組まなくていい。
| カテゴリ | テンプレート例 |
|---|---|
| Computer Vision | Object Detection with Bounding Boxes、Image Segmentation |
| Natural Language Processing | Named Entity Recognition、Text Classification |
| Audio/Speech | Speech Transcription、Speaker Diarization |
| Conversational AI | Chatbot Response Evaluation、Intent Classification |
| Generative AI | LLM Response Evaluation、Pairwise Comparison |
たとえば画像の物体検出なら「Object Detection with Bounding Boxes」を選び、ラベル名(「car」「person」「bike」など)を打ち込むだけで設定が完了する。テンプレートの中身はXMLで定義されており、慣れれば独自UIに作り替えることもできる。
ステップ5:アノテーション作業を進める
タスク一覧から画像・テキスト・音声をクリックすると、ラベリング画面が開く。ここからが本番だ。
画像アノテーションの操作は直感的でいい。
- ラベル名をクリック(またはキーボードの数字キー)でモードを選ぶ
- マウスでドラッグして枠を作成
uキーで選択解除、Backspaceで削除- 「Submit」で確定、「Skip」でスキップ
数をこなすなら、マウスより先にショートカットを覚えたほうが速い。主要キーをまとめる。
| キー | 動作 |
|---|---|
| 1〜9 | 対応するラベルを選択 |
| u | 選択解除 |
| Backspace | 選択中の枠を削除 |
| Ctrl+Z | 一つ戻る |
| ← → | 前後のタスクへ移動 |
数百件規模になると、この左手のショートカットが効いてくる。地味だが作業時間を大きく削る。
ステップ6:アノテーション結果をエクスポートする
ラベリングが終わったら、機械学習で使える形式に書き出す。Label Studioは主要フォーマットを一通り押さえている。
JSON / JSON-MIN / CSV / TSV / COCO / YOLO / Pascal VOC XML
物体検出のCOCOやYOLO、テキストのJSONなど、フレームワークに直接投入できる形式をワンクリックで出力できる。エクスポート形式で迷ったら、学習に使うライブラリが想定する形式に合わせるのが正解だ。
エクスポートまで通せば、ラベリングの一周は完了する。次は、この作業をAIに手伝わせて速くする方法だ。
MLバックエンド連携:AI補助ラベリングを活用する

Label StudioにMLモデルをつなぐと、AIが先に下書きラベルを付け、人間はチェックと修正だけで済む。これが「MLバックエンド」だ。手作業100%から、AI下書き+人間レビューに変わるだけで、大量データの処理速度はまるで違ってくる。
最小構成のモデルはこの形になる。predictメソッドが、各タスクに対する予測を返す。
# mlbackend/model.py(最小構成例)
from label_studio_ml.model import LabelStudioMLBase
class MyModel(LabelStudioMLBase):
def predict(self, tasks, **kwargs):
# 既存のMLモデルを使って予測
predictions = []
for task in tasks:
predictions.append({
"result": [
{
"type": "rectanglelabels",
"from_name": "label",
"to_name": "image",
"value": {
"x": 10, "y": 10, "width": 50, "height": 50,
"rectanglelabels": ["car"]
}
}
]
})
return predictions
書いたモデルはコマンドひとつでサーバーとして立ち上げる。
# MLバックエンドサーバーを起動
label-studio-ml start ./mlbackend
あとはLabel StudioのプロジェクトSettings > MLで http://localhost:9090 を登録すれば、アノテーション画面にAIの候補が自動で表示される。人間はそれを直すだけだ。
競合ツールとの比較:どれを選ぶべきか
Label Studioの立ち位置を、主要な競合と並べてみる。
| 項目 | Label Studio | CVAT | Labelbox | V7 |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | OSS / クラウド | OSS / SaaS | SaaS | SaaS |
| 無料プラン | ✅ 完全無料(CE) | ✅ OSS版 | ❌ トライアルのみ | ❌ トライアルのみ |
| 対応データ | マルチモーダル全般 | 主に画像・動画 | 画像・テキスト中心 | 画像・動画特化 |
| 動画強度 | △ 基本対応 | ◎ トラッキングが強力 | ○ 標準対応 | ◎ 高精度 |
| LLM評価 | ◎ 専用テンプレートあり | ✗ | ○ | △ |
| セルフホスト | ◎ ローカル対応 | ◎ | ✗ | ✗ |
| 有料最安 | $99/月〜 | CVAT Cloudは要問合せ | 要問合せ | 要問合せ |
| カスタムUI | ◎ XML設定で柔軟 | ○ | ○ | △ |
表をひとことで言えば、Label Studioは「データ種別の広さとセルフホスト」で頭ひとつ抜けている。逆に動画特化ならCVATが強い。
用途別おすすめ
Label Studioを選ぶべき人:
- 複数種類のデータ(テキスト・画像・音声混在)をまとめて扱いたい
- LLMやRAG(社内資料を読ませて答えさせる仕組み)の評価データを作りたい
- 機密データをローカル環境で扱いたい
- エンジニアチームで柔軟にカスタマイズしたい
CVATが向いているケース:
- 動画の細かいフレーム単位アノテーションやオブジェクト追跡が主な用途
- コンピュータビジョン特化のチーム
Labelboxが向いているケース:
- クラウドネイティブ環境で大規模チームを管理したい
- エンタープライズサポートが必須
編集部の評価
データラベリングツールは「対応データ形式の広さ」「導入コスト(無料枠とセルフホスト可否)」「チーム運用の現実性(権限管理・API・拡張性)」の3軸で見るのが妥当だ。AI開発の現場では画像だけ・テキストだけで完結する案件は少なく、マルチモーダル対応とスケール耐性が選定の分かれ目になる。
公式ドキュメントと料金ページを突き合わせると、各ツールの立ち位置はこう分かれる。
| ツール | 料金体系 | 対応データ | セルフホスト | 日本語UI |
|---|---|---|---|---|
| Label Studio | Community無料 / Cloud $99〜 / Enterprise要問合せ | 画像・テキスト・音声・動画・時系列 | 可(OSS) | 部分対応 |
| CVAT | OSS無料 / Cloud有料プランあり | 画像・動画中心 | 可(OSS) | 部分対応 |
| Labelbox | 無料枠あり / 従量課金 | マルチモーダル | 不可(SaaS) | 英語中心 |
| V7 | 要問合せ(商用中心) | 画像・動画・医療画像 | 不可(SaaS) | 英語中心 |
商用利用条件・最新の価格は各公式サイトで確認すること。公開情報をもとに率直に評価すると、こうなる。
- 無料でマルチモーダル: 破格。pip/Dockerで立ち上がり、画像も音声もLLM評価も1ツールで完結する点は圧倒的に強い。
- 動画の本格トラッキング: 正直イマイチ。フレーム単位の追跡はCVATのほうが扱いやすく、ここはCVATに譲る場面が多い。
- チーム権限管理: Community版は全員管理者で割り切りが必要。RBACが要るならStarter Cloud以上が一択になる。
- 日本語: UIは英語だが、扱うデータ(日本語テキスト・音声)は問題なく処理できる。実用上の支障は小さい。
総合すると、個人・研究・コスト最優先のスタートアップはCommunity Edition一択でいい。動画中心ならCVAT、SSOや監査ログが要る企業はEnterpriseかLabelboxを比較検討するのが現実的だ。
よくある質問
Q. Label Studioは日本語で使えますか?
UIは英語だが、アノテーション対象のデータ(テキスト・音声)は日本語に完全対応している。日本語テキストのNERや感情分析にも問題なく使える。なおコミュニティはSlack・GitHub中心で、公式ドキュメントは英語だ。
Q. 商用利用はできますか?
Community Edition(OSS)はApache License 2.0で提供されており、商用利用が可能だ。ただしStarter Cloud / Enterpriseの利用規約は別途確認が必要。
Q. 既存のMLフレームワークと連携できますか?
できる。REST APIとPython SDKが充実しており、TensorFlow・PyTorch・Hugging Faceなどと連携可能だ。MLバックエンド機能を使えばAI事前ラベリングも組み込める。クラウドストレージはAWS S3、Google Cloud Storage、Azure Blob Storageに対応している。
Q. アノテーター向けのロール管理はできますか?
Community Editionは全ユーザーが管理者権限のため、ロール分離はできない。Starter Cloud以上でロールベースアクセス制御(RBAC)が使え、Owner・Admin・Manager・Reviewer・Annotatorの5ロールを割り当てられる。
Q. インストールでエラーが出たら、まず何を確認すればいい?
多いのはPythonのバージョン不一致とポート8080の競合だ。仮想環境を作り直し、label-studio start --port 8081 のように別ポートで起動すると解決することが多い。それでも詰まるなら、環境差を吸収できるDocker起動に切り替えるのが早い。
Q. アノテーションの途中で保存して、後から再開できますか?
できる。「Submit」で確定、「Skip」で保留、未確定のタスクはタスク一覧に残る。複数人で分担する場合も、各自が自分のタスクを進めて随時提出する形になる。
Q. どれくらいのデータ量を扱えますか?
Community Editionにデータ量の制限はない。Starter Cloudは最大12ユーザーのチーム向けで、エンタープライズ規模のデータ量や運用には Enterprise が現実的だ。
Q. 最新バージョンで追加された機能は?
2026年3月13日リリースのLabel Studio 1.23.0では、ベクターアノテーション機能、インタラクティブなタスクソースビューワー、Data Managerのワークフロー改善が入った。Advanced PDF + OCRインターフェースにより文書AI向けの精度も向上している。
LLMファインチューニングへの応用:Label Studioをデータパイプラインに組み込む
Label Studioの需要が伸びている背景に、LLMファインチューニング用データの作成がある。ChatGPTやClaudeのような大規模言語モデルを自社データで特化させるには、大量の高品質な教師データが必要になるからだ。
RLHF(人間のフィードバックによる強化学習)データの作成
RLHFは、人間の評価者がAIの回答を比較・ランキングし、その結果でモデルを訓練する手法だ。Label Studioにはこのワークフロー専用の「Pairwise Comparison」テンプレートがある。
典型的な作成フローはこうなる。
- LLMに同じプロンプト(AIへの指示文)への回答を複数生成させる
- Label Studioで回答をペア表示し、アノテーターが「どちらが良いか」を評価
- 評価結果をJSON形式でエクスポート
- Reward Model(報酬モデル)のトレーニングに利用
- PPO(Proximal Policy Optimization)でLLMを微調整
エクスポートされるデータは、たとえば次のような形だ。
// エクスポートされるRLHFデータの例
{
"prompt": "日本の首都について教えてください",
"chosen": "東京は日本の首都で、世界最大級の都市のひとつです。",
"rejected": "首都は東京です。",
"annotator_preference": "chosen",
"confidence": 0.92
}
RAG(検索拡張生成)評価データの作成
RAGシステムの品質評価にもLabel Studioが使える。ユーザーの質問・検索結果・LLMの回答の三つ組みに対して、「正確性」「関連性」「根拠の明確さ」などの軸で評価していく。
// RAG評価データ形式例
{
"question": "2026年のAIツール市場規模は?",
"retrieved_context": "...",
"answer": "...",
"faithfulness": 4,
"relevance": 5,
"correctness": 3
}
アノテーター品質管理:大規模プロジェクトでの活用

人手が増えるほど、ラベルのブレが品質を蝕む。Label Studioでは複数アノテーターが同じタスクにラベルを付け、アノテーター間一致率(Inter-Annotator Agreement, IAA)を計算して品質を管理できる。
アノテーター品質を高める3つのプラクティス
① ガイドライン設計を徹底する ラベル定義が曖昧だと、人によって判断がブレる。「どこからどこまでがpositive感情か」を具体的な例文つきで明示するのが効く。Label Studioのプロジェクト設定に「Instructions」を書き込める。
② 校正タスク(Calibration Tasks)を挟む アノテーター全員に同じ10〜20タスクを割り当て、一致率を測る。一致率が低ければ、ガイドライン修正や追加トレーニングのサインだ。
③ レビュアーワークフローを設定する(Starter Cloud以上) アノテーターが提出した結果を、レビュアーが承認・却下できるワークフローを組む。ここはCommunity版ではできない領域になる。
Inter-Annotator Agreement(IAA)の計算
一致率はPython SDKで取得・計算できる。Cohen's Kappa係数なら0.8以上が一つの目安だ。
# Python SDKを使ったIAA計算例
from label_studio_sdk import Client
from sklearn.metrics import cohen_kappa_score
ls = Client(url='http://localhost:8080', api_key='YOUR_API_KEY')
project = ls.get_project(project_id=1)
# タスクとアノテーションを取得
tasks = project.get_labeled_tasks()
# Cohen's Kappa係数などで一致率を計算
annotator_1_labels = [...]
annotator_2_labels = [...]
kappa = cohen_kappa_score(annotator_1_labels, annotator_2_labels)
print(f"Cohen's Kappa: {kappa:.3f}") # 0.8以上が目安
Label Studio導入ロードマップ:個人〜企業規模別
個人・研究者(Community Edition)
最初の一歩から学習まで、無理なく進める順番はこうだ。
| フェーズ | やること | 期間目安 |
|---|---|---|
| 1. 環境構築 | pip install → ローカル起動 | 30分 |
| 2. 最初のプロジェクト | テンプレートで100件アノテーション | 1〜2時間 |
| 3. MLバックエンド連携 | 既存モデルをAPI経由で事前ラベリング | 1〜2日 |
| 4. エクスポート・学習 | COCO/YOLO形式でエクスポートしてモデル訓練 | プロジェクトによる |
スモールチーム(Starter Cloud)
- 無料トライアルで評価:実プロジェクトのデータ100〜500件でワークフローを検証
- ロール設定:Owner(管理者)・Annotator・Reviewerを割り当て
- クラウドストレージ連携:S3バケットを直接ソースにして大量データを処理
- 品質モニタリング:IAAダッシュボードで週次レポートを確認
企業・大規模チーム(Enterprise)
- SSO/SCIM統合:Active DirectoryやOktaと連携してユーザー管理を自動化
- RBAC設計:部署・プロジェクト・データ感度別に権限グループを設計
- 監査ログ:誰がいつ何をラベリングしたか全記録を保持(HIPAA・GDPR対応)
- Kubernetes展開:高可用性構成でダウンタイムを抑える
Label Studioの注意点と限界
優れたツールだが、万能ではない。導入前に弱点を知っておくと、後悔が減る。
向いていないケース
- 3Dポイントクラウドのアノテーション:自動運転向けの3D点群には対応が限定的。専用ツール(Scale AI、BasicAI等)が適している。
- 高フレームレート動画の細かいトラッキング:CVATのほうが動画特化機能が充実している。
- ノンエンジニアがすぐ使いたいケース:Community Editionはセットアップに技術知識が要る。手軽さならSaaS型(Labelbox等)が上だ。
セキュリティ上の注意点
Community Editionは全ユーザーが管理者権限になるため、外部公開サーバーではアクセス制御が不十分だ。本番運用では、認証情報を環境変数で管理し、HTTPS化を必須にする。
# 環境変数でDBクレデンシャルを管理(ハードコードしない)
export LABEL_STUDIO_DB_USER="ls_admin"
export LABEL_STUDIO_DB_PASS="YOUR_SECURE_PASSWORD"
# リバースプロキシ(nginx)でHTTPS化必須
# 外部公開する場合は認証レイヤーを追加すること
ロール分離・SSO・監査ログが必要なら、Starter Cloud以上への移行を強くすすめる。無料の手軽さと引き換えに、運用の責任は自分側に残る——そこだけは割り切って設計したい。
